子供の頃、親父と喧嘩することがあった。
小さい頃は、どんなに全力で歯向かっても勝てなかった。
力の差を思い知らされる。
それが当たり前だった。
でも、ずっと野球を続けて、高校生になる頃には自分にも随分と力がついてきた。
そして、ある時ふと思った。
今、本気でやったら親父に勝てるんじゃないか。
不思議なもので、そう思った頃から親父に歯向かうことがなくなっていった。
たぶん、その時に気づいたんだと思う。
親父の強さって、そういうことじゃないんだなって。
腕力で勝てるようになったからといって、親父を超えたわけじゃない。
それまで自分が見ていた強さは、ほんの一部分だったんだよね。
だから、勝っちゃいけないと思った。
別に負けてあげるとか、遠慮するとか、そういうことでもない。
ただ、力で勝ち負けを決めること自体に、意味がなくなったんだと思う。
子供の頃は、勝てないから歯向かっていた。
でも、勝てるかもしれないと思った時に、歯向かわなくなった。
今考えると、あれが自分にとって、父親の偉大さを初めて感じた瞬間だったのかもしれない。