昔、高野和明さんの『幽霊人命救助隊』という小説を読んだ。
今でも、良い本だったなと思う。
自ら命を絶った青年が、罰として自殺を考えている人を100人救うことになる。
ところが幽霊だから、姿も見えなければ声も届かない。
そんな中で懸命に人を救おうとする、コミカルでありながら、人間の心理を実に巧みに描いた物語だ。
人が死にたいと思う理由は、人それぞれ。
明確な原因がある人もいれば、本人ですら理由が分からない人もいる。
大きな出来事があったわけでもなく、小さな何かが少しずつ積み重なって、いつの間にか身動きが取れなくなっている。
まるで、複雑に絡まった毛糸の塊のように。
どこから手をつければいいのか、どうやってほどけばいいのかも分からない。
そんな先の見えない不安や、言葉にできないドス黒い何かを抱えているのかもしれない。
でも、周りの人間は理由を知りたがる。
仕事なのか、人間関係なのか、何かつらい出来事があったのか。
理由が見つかれば、理解できたような気になる。
でも、それは本当に相手を理解したことになるんだろうか。
自分のことなら、そんなに単純じゃないと分かっているのに、他人のことになると簡単に結論を出してしまう。
結局、自分が納得できる答えを見つけて、安心したいだけなのかもしれない。
この小説を読んで、そんなことを考えた。
人の気持ちなんて、そう簡単に分かるものじゃない。
だから、無理に分かろうとするのはやめようと思った。
もちろん、関心を持たないということではない。
ただ、勝手に理由をつけたり、結論を出したりしない。
分からないものを、分かったつもりにならない。
それだけは忘れずにいたい。









